大阪地方裁判所 昭和45年(ワ)19号 判決
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〔判決理由〕一、事故の発生およびその状況
請求原因(一)項の事実については事故の態様の点を除いて当事者間に争がなく、<証拠>を総合すると、次の事実が認められ、他に右認定を覆えすに足りる証拠はない。
(一)、本件事故現場は、南北に通ずる和泉泉南線の遠里小野橋南詰附近路上であり、右道路は車道部分の幅員が橋上で一四、四メートル、橋の南側で17.6メートルで、車道中央には白線でセンターラインが引かれている交通の頻繁なアスファルト舗装の平担な直線道路であるが、前方の見通しは右橋が中央部が高くなつてゆるやかに彎曲しているため南進する場合橋の中程まで来なければ南側の見通しは充分にきかない状況にある。そして、右道路の制限時速は五〇キロメートルに規制されており、さらに、橋の南端には幅員4.5メートルの道路が東西に走り右南北道路と交差している。
(二)、被告和佐は、事故車を運転して本件道路を南進中、遠里小野橋北詰の交差点において、信号待ちのためセンターライン寄りの最前列に停止したうえ、青信号とともに発進しセンターライン寄りを時速四〇ないし四五キロメートルの速度で進行し橋のほぼ中央附近まで来たとき、進路前方約四二メートルの前記東西道路との交差点中央附近にセンターラインをまたいで西向きに停止している訴外谷口平太郎運転の足踏自転車とその南方約一四〜五メートル附近にセンターラインを超えて南行車線内に侵入してかなりのスピードで北進してくる被害車を発見したが、事故車の右端からセンターラインまでに1ないし1.5メートルほど余裕があつたので格別危険はないものと判断し、アクセルペタルから足を離しただけの状態で約一二メートル進行したところ、被害車がセンターラインをまたいで停止していた前記自転車の後部に接触したので、危険を感じ急ブレーキをかけたが間に合わず、事故車が約12.3メートル前進したところで、スリップしながら横たおしの状態で進行してきた被害車と衝突し、その後約1.4メートル前進して停止した。なお、事故車の左側には近接して併進する車輛があり、その右側にも対向車があつたので、被告和佐としてはハンドル操作により衝突を回避する余地はなかつた。
(三)、司朗は、被害車を運転し相当なスピードで本件道路のセンターライン寄りを北進して事故現場附近にさしかかつたとき、前方にセンターラインをまたいで西行きに停止している前記足踏自転車を発見したので、その後方を通過しようとしてその手前約二〇〜三〇メートルのところからセンターラインを約一メートルほどオーバーして、対向車線内を進行したが、右自転車の後方を通過する際被害車が自転車の後部に接触したので安定を失つて対向車線内をそのまま前進し、次いで横倒しの状態になつて約7.5メートルスリップして事故車の前部に衝突し、司朗は事故車の直前に投出されて転倒し被害車は右衝突地点から左斜めに約5.6メートル暴走して北行車線内に停止した。なお、当時司朗はヘルメットを着用していなかつた。
二、被告らの責任原因および免責の主張に対する判断
被告会社が事故車を所有していたことおよび本件事故は被告会社の従業員である被告和佐が事故車を運転して被告会社の業務を遂行中に惹起されたものであることは当事者間に争いがない。
そして、前示認定の本件事故の状況によれば、本件事故は、被害者司朗の無暴なセンターラインオーバー、ハンドルブレーキ操作不適当等の過失に基因するところ大であると言わざるを得ないが、他方、被告和佐は、進路前方約42.3メートルにセンターラインをまたいで西向きに道路と直角に停止している足踏自転車と、さらにその前方約14.5メートルに相当なスピードでセンターラインをオーバーして北進してくる被害車を発見しており、したがつて、被害車が直ちに北行車線内にもどつて右足踏自転車の前部を通過することも、右足踏自転車の後方を通過したうえ事故車と対向する以前に北行車線内にもどることも難しい状況にあることを認識し得たのであるから、被害車が自車の進路に直進してくる危険性を予見し直ちに減速して事故の発生を未然に防止すべき注意義務があるのに、いまだ危険はないものと速断し、単にアクセルから足をはずしたのみで、直ちに制動措置をとらなかつた点において、同被告が事故防止のために十分な措置を尽したものとはいい難い。もつとも、右措置をとつていたとしても、被害車との衝突は避けえなかつたのではないかとの疑問は残るが、被告和佐が被害車を発見すると同時に減速しておれば、被害車と前記足踏自転車との接触を発見した際ごく短い距離で停止することができ、その場合衝突時点における被害車の速度も相当弱まつていたであろうと推測できるので、少なくとも死亡というような重大な結果は避けえたものと考えられる。したがつて、被告和佐の右過失は本件事故と因果関係があるものと言わざるを得ない。
なお、原告らは被告和佐に前方不注視および積載超過の過失があると主張しているが、前者についてはこれを認めるに足りる証拠はなく、後者については、前掲証拠によれば事故車は0.5トン程積載超過をしていることが認められるが、右積載超過と本件事故との間に因果関係ありとは直ちに認め難い。
そうすると、被告和佐は民法七〇九条により本件事故によつて生じた損害を賠償する責任があり、被告和佐に過失の認められる以上その余の点について判断するまでもなく被告会社の免責の主張は理由がないから、被告会社は自賠法三条、民法七一五条により本件事故によつて生じた損害を賠償する責任がある。<中略>
三、(五)、過失相殺
前示本件事故の状況によれば、本件事故は、司朗のセンターラインオーバー、ハンドル・ブレーキ操作不適当の過失さらにヘルメットを着用しなかつたことに基因するところ大であるから、右過失は損害賠償額を算定するにあたつてこれを斟酌すべきであるところ、被告和佐の過失等諸般の事情を考慮すると、前記損害額から七五パーセントを減ずるのが相当であると考える。
(本井巽 笠井昇 伊東武是)